九州大学 伊藤幸司教授 × 八尋由紀社長
目から鱗の連続!中世の博多にタイムスリップ

博多は国際航路と国内航路の結節点
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伊藤教授
いまも昔も大切なのは航海安全。東アジア世界では、観音様が航海の安全を守る仏様です。実は、博多湾の出入口の東西に観音様がいるんです。志賀島の荘厳寺には、聖観音菩薩立像がありますし、唐泊の小田観音堂には千手観音菩薩立像があります。
八尋
航海安全を祈念するとともに博多湾を守っているように見えますね。
伊藤教授
そのように考えると見えてくることがあります。国際貿易港・博多というのは、博多湾全体を指すのではないかということです。小さな都市である博多だけではなくて、博多湾の港町が協力しあって国際貿易機能を担う、港町複合体がその実像だったのではないかと、私は考えています。
八尋
博多湾の港町は、それぞれいろいろな役割を持っていたんですものね。
伊藤教授
博多の特徴をもう少し掘り下げると、まず、ローカル・ポートとしての役割があります。川でつながった後背地の積出港としての機能。それに加えて、大陸の貿易を行うインターナショナル・ポートとしての役割がある。つまり、博多は国内航路と国際航路の結節点であり、博多湾の港町はローカル性と国際性とを持ち合わせていたということです。この重層性、両面性こそが博多の最大の特徴だととらえています。
八尋
宋海商も博多まで荷物を持って来れれば、それでOKということですね。博多で積み替えて最終目的地まで運んでもらえばいい。
伊藤教授
当時の最大消費地は京都だったのですが、そこまで運ぶのに、わざわざ自分たちで博多から瀬戸内海を通って兵庫まで航海する必要はないんです。
八尋
瀬戸内海は海賊も出ますしね。
伊藤教授
実際に朝鮮からの外交使節が何度も瀬戸内海で海賊に襲われています。しかし、瀬戸内海は京都へ行くためのハイウェイみたいなものなので、避けて通るわけにはいかない。博多のすごいところは、大陸とつながっていると同時に、瀬戸内海という国内でも重要な海と接続している点ですね。